ころしてやる。

寝言でたまにあなたは言う。

最初は驚いた。

一体どんな夢を見ているのか。誰の夢を見ているのか。

気になって、翌日聞いてみたけれど、

「夢なんて覚えてません」

とつれない返事。

そして、また。

ころしてやる。

あなたは寝言で呟く。

普段と変わらない寝顔で。

真面目で頑固で優しくて。里の皆を愛し、皆に愛されているイルカ先生。

そのイルカ先生が、夢の中とはいえ、ころしてやると、呟く相手。

・・・オレだったらいいのに。

いつも思う。

イルカ先生の感情が、全部オレに向けばいいのに。

好きも嫌いも、憎いも愛してるも、全部オレになったらいいのに。

あの人の中が、全部、オレだけになったらいいのに。

 

 

 

「つまんない事を言うんじゃありませんよ」

イルカ先生は、呆れたように言った。

「そんな俺なんか、あなたすぐに飽きちゃうでしょ?」

そう言って、ふいと遠くを見る目に、また、オレの知らない闇が見える。

つまんない事じゃないよ。

オレは堪らなくなって、その体を抱きしめた。

全部知りたい。全部欲しい。

イルカ先生を全部。余すところ無く全部、オレに下さい。

 

 

 

そうやって。

囚われていく自分を、とめることができない。

それがあの人の罠だと、気づいているのに。

 

 

 

落ちてしまう。

 

 

 

060629

 

 

 

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