※注※3月前期Web拍手御礼リメイク

 

 

 

「もう、生徒じゃないよね」

残照が、彼の髪をはっとするほど綺麗なオレンジ色に染めていた。

卒業式は午前中に終わった。互いに名残を惜しむ者たちも帰路につき、夕刻を迎えた校舎に、他に人の気配は無い。

二人きりの教室。張り詰めた空気は、緊張か、それとも何かの予感を孕んでか。

「もう、オレはあんたの生徒じゃないよね」

教室の窓枠に腰をかけ、俺にその端整な顔をまっすぐ向けて、確かめるように言う声は、まるで別人のように大人びて聞こえた。

確か、1年前のあの夜にも、彼はこんな声で俺に想いをぶつけてきた。

 

あんたが好きです。

何て言ったらこの気持ちがちゃんと伝わるのか全然分らない。それ位、好きです。

 

その時まで、俺の中でのはたけカカシは、数学の授業を受け持っている2年7組の、出席番号33番の、格好も態度も他の生徒と変わらないのに匂い立つような存在感のある、だが、大勢いる生徒の中の一人、の域を出ていなかった。

「ね、イルカ先生」

目の前で微笑む男に何度、拒絶の言葉をぶつけただろう。

何度、ずっと待ってると、真摯な瞳で返されただろう。

男同士だから、教師と生徒だからと、呪文のように心に刻みつけた戒め。そうやって自分に言い聞かせる行為が、もう既に、彼への想いの裏返しだと気付いたのは何時だったか。

絆されたなんて言葉は使いたくない。

そうと知っていながら恋の奈落に落ちたのは、確かに俺自身なのだから。

 

もう、彼は俺の生徒じゃない。そして。

「・・・俺も、もうお前の先生じゃない」

「・・・うん」

ずっと拒み続けてきたその手を、取る。触れ合う温かさに、焦れるように胸が痛くなる。

見交わす瞳の中に、求め、求められている事を、今更ながらに思い知らされる。

 

「イルカ」

そしてカカシは。

今まで聞いたことのない位子供じみた声音で、俺を呼んだ。

 

 

 

060308

060311リメイク

 

 

 

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