※注※05年12月期Web拍手御礼リメイク |
花が似合う男など、そうそういるものではないが。 深紅の薔薇の花束を携えた素顔のカカシさんは、空恐ろしいほど絵になった。 「貰いものです」 出迎えた玄関で、無造作に俺に差し出した。 「捨てた方がよかったんですが、花に罪はありませんし」 茎を長く取り、白と灰色の和紙ですらりと細く作った花束。薔薇の赤がとても映える。 艶やかな花弁は、満開の一歩手前で、あでやかにほころんでいる。 「捨てるなんて、勿体無い」 「そう言うと思った」 誰にもらったんですか? その言葉は飲み込んだ。いくら疎い俺でも、薔薇の花言葉と、そこに込められる意味位知っている。 大抵は女性に贈るものだろうけれど。 カカシさんはもてる。上忍で、男前で、温厚な性格のこの男は、とてつもなくもてる。 なのに、いつまでもカカシさんは一人で、こうしていつも俺の部屋に来る。 その理由を、カカシさんは言わない。俺も聞かない。 互いに、何かを感じ取っている事に気がついているのに。 バランスは、いつもぎりぎりで保たれている。 俺の部屋には花瓶などない。 さて、どうしようと考え込んだ俺の耳に、カカシさんの苛立った声が入った。 「何にも、聞いてくれないの?」 「え?」 「誰に貰ったのかって聞いてくれないの?」 その色違いの瞳が、常に無いほど尖っている。 「・・・嫉妬もしてくれないって、分かってはいましたけど」 本当に。 憎らしい。 そしてカカシさんは、その長い指で薔薇の花を無造作に摘んだ。 赤と蒼の射るような眼差しに、俺は思わず目を閉じた。 次の瞬間、広がったのは、瑞々しく濃密な薔薇の香りと、唇を焦がす苦さ。 歯と舌に絡みつく、情熱の花弁。 ほころびかけていた花は、俺の口の中で、咲いて散った。 そして、薔薇の花弁ごと、カカシさんは俺に口付けた。 051217 060702リメイク |
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