※注※ 覚書より移動 |
「オレが死んだらどうします?」 白飯と味噌汁の湯気の向こうで、カカシさんが言った。味噌汁の碗に口をつけた俺は、目だけで彼を見上げた。 「・・・飯時に相応しい話題とは言いかねますね」 「相応しい時なんかない話題ですから」 碗をちゃぶ台に置いた俺は、焼き魚に箸を伸ばしながら答えた。 「泣きますね。暫くは飯も喉を通らないと思います」 「で?」 身を乗り出したカカシさんに、俺は苦笑した。 「まぁ、後はそれなりに、何とかやって行くんじゃないですか」 カカシさんは、拍子抜けしたような、ほっとしたような、微妙な表情を浮かべた。 「後を追うって言わなくて、がっかりしましたか?」 カカシさんは、小さく息をつくと、にっこりと笑みを浮かべた。 「いいえ。安心しました」 「・・・安心、ですか」 「イルカ先生にはねぇ、元気で幸せに、ずっと笑って生きていって欲しいんです。オレがいなくなった位で弱っちゃうなんて、心配で心配で、死んでも死に切れませんよ」 「・・・まぁ、その点はご心配なく」 俺も笑った。 決めている事がある。 カカシさんが死んだら、火影様にお願いして彼の資料の整理をさせて貰おう。 彼が生きている間は決して知る事のできない、カカシさんの忍としての道のりを、一文字たりとも見逃さず、この心に刻みつけよう。 それから、カカシさんの家と俺の部屋を片付けよう。 二人とも係累はないし、残すべきものもない。愛着も思い出も、心にあるものだけで十分だ。形あるものはすべて燃やして土に返してしまおう。 それが終わったら、ナルトに手紙を書こう。 ずっと見守りたかったけれど、それが叶わない事を詫びよう。お前が一人前の忍として初めて教えを受けた男と同じように、強く優しく、気高く生きてくれと願おう。 お前は、誰よりも何よりも俺の誇りだと伝えよう。 そして、最後に、慰霊碑に向かい、そこに彫られたカカシさんの名前に口づけよう。 彼のいない世界へのさよならを、きちんと済ませた事を知らせよう。 彼の後を追う術は、まだ決めていない。 迎えに来てくれればいいのにとも思うが、それも虫のよい話だ。 だが、どんな方法を選ぶにしろ、それは彼の側へ行く為の、甘美な作業となるだろう。 これは、言う必要の無いことだ。 とびきり強くてとびきり優しい、心配性の彼には、言う必要の無いことだ。 051130 061007リメイク |
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