「春は、寂しいですね」

カカシさんが言った。

「寂しいですか?」

問い返すと、カカシさんは、こいつのせいですかね、と視線を遣った。

目の前には、満開の花をつけた桜の木が、薄曇の空へ向かって堂々と枝を伸ばしている。

「咲いた花が散るのは自然の摂理として当然ですけれど、桜って、その事実を、すごく意識させるじゃないですか」

絢爛に咲き誇る花を見つめながら、人は、それが舞い散る儚さを思う。

「この世界に、変わっていかないものなんて無い。そんな事は分かっている」

でも、とカカシさんは囁くように言った。

「それが、今のオレには、怖いんです」

 

風が、吹いた。

揺さぶられた桜の木から、吹雪のように、美しい色が舞い落ちる。

枝を離れたそれは、他の花弁と分かれ、脆い薄桃色の一ひらとなり。

風に玩ばれて宙を舞い、地に落ちて積み重なり、いずれ、土へ溶けてゆくだろう。

 

「いつか、あなたが、オレを忘れる日がくるかもしれない」

ゆっくりとこちらへ顔を向けたカカシさんの、宵闇の瞳にじっと見つめられて、息を飲む。

「他の誰に忘れられてもいい、ただ、あなたの心の中にだけ、ずっと残っていたい」

そう、願っているのに。

「時が、あなたから、オレを失わせるかもしれない」

それが、死ぬ事より、怖いんです。

 

今。

あなたの心に吹き荒れている嵐がどんなものか、想像することしかできないけれど。

俺には、忍として誰よりも強いあなたと、共に並んで走る事はできないだろうけれど。

 

それでも、俺はあなたに伝えたい。

心配することは何も無い。

怖いものなど何も無い。

この世界のすべてがあなたを裏切ったとしても。

「俺はずっと、あなたを待っています」

 

信じられないというならば、俺は一生をかけて、この言葉を証明して見せましょう。

 

「御武運を」

旅立つカカシさんの背が、舞い散る花びらの向こうに消えても、俺はずっと、彼の行く先を見つめていた。

 

そこから戻ったあなたを、この腕に抱きしめる事ができる日まで。

俺はずっと、あなたを待っています。

 

 

 

080406

 

 

 

しどろさまにこんな素敵なカカシさんをいただきまして、

たまらず妄想文をつけてしまいました。イラストはこちらv

見つめる先は、哀であり愛。

しどろさま!ありがとうございました!

 

 

 

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