「イルカにベタ惚れのカカシ、ヤキモチやいて初々しい初エッチ」




別に自分を卑下する訳じゃないけど。
俺は忍としても男としても平凡な部類の人間だと思う。
ガキの頃は、亡くなった両親のように上忍になりたかった。階級に対する憧れと、最前線で戦って木の葉を守る栄誉こそが忍としての誇りだと思っていた。
でも、残念ながら、長じるにつれて、自分が性格的に戦忍に向いていない事を、経験と共に思い知った。悔しいけれど、持って生まれた性格は、努力だけでは如何ともしがたい。
未来の里を担う子供達を教え導く今の仕事に、誇りと自負を持っているけれど、特別だ、と鼻を高くするものではない。
男としても、正直、はっきり言って、モテた事なんかない。
初めての彼女は俺が惚れて、俺なりに大事にしたつもりだったけれど、どうにもうまくいかなかった。それ以来、結局ずるずると一人が続いていた。
いい人ね、と女性にはよく言われるけれど、それが異性としては興味が無いと同義らしい。それで、何度痛い目に遭った事か。
結局、平凡。ごくごく普通。自分でも清々しい位だ。
だから、とても不思議な気持ちがする。
この人が、こんなにも緊張しているのが。

俺より体温が低いせいだろうか。きつく抱き締められても、どこか涼やかな気がする。
そのままベッドに倒されて、首筋を擽っていた吐息の温かさが湿った感触に変わる。同時に、ゆっくりとした、しかし迷いの無い動きで、手がシャツの内側に入り込んできた。その指も、ひんやりと優しい。
「・・・っ」
濡れて柔らかな感触の狭間に、硬い先端が触れて、思わず声が漏れた。甘噛みされたのだと知って、それが自分でも驚く程恥ずかしく感じられる。
確かに俺も緊張している。同性は初めてだし、どうやら俺が受身のようだし。
だが、それ以上に、俺を組み敷くこの人の方が緊張しているようなのはどういう訳だろう。
微かに、ほんの微かにだけれども、俺の髪を結わえる紐を解こうとする指が、震えている。その濃灰色の瞳が、俺のどんな僅かな動きも追いかけて、反応して、どこか不安気に瞬いている。
俺は手を伸ばして、カカシさんに触れた。
シャツの上からでも鍛え上げられているとはっきりと分かる胸筋の間。全身に血を巡らせる為の、大切な場所。
「・・・音、すごいでしょ?」
カカシさんが、困ったように眉を下げて、微笑んだ。
「自分の心臓の音で、のぼせそうになるなんて、初めてです」
「そんな・・・」
俺はそんな、大層なものではない。傷だらけの硬い身体に、股間には同じ一物。外見も中身も、どこにでもいる、平凡な中忍の男だ。
イルカ先生は、とカカシさんは耳から溶けるような声で囁いた。
「オレがどれだけ先生の事好きか、全然分かってないよね」
だから、あんな事して平気なんでしょ。
憎たらしい、と悲しげに微笑む目が、痛い程に、胸に迫ってくる。
だって、仕方ないじゃないか。気のおけない友人達と飲みに行って、気分よく酔っ払うなんてざらだ。そのまま俺の家で宅飲みになって、べろべろになって雑魚寝するのもざらだ。まだ暑気が残る夜、酒で体温が高くなって知らぬ間に服を脱いでいたって、ぶっちゃけ半裸だろうがフリチンだろうが、男同士、気にする訳がないだろう。
だから、最初、俺はカカシさんが何に怒っているのか、全然分からなかった。
カカシさんがどれだけ大切に俺の事を考えていてくれたのか、全然気付いていなかった。
「オレの気持ち、ちゃんと分かってたら、あんな事できる訳ないです」
触れたくて口付けたくて抱きたくて、それでも、絶対に無理強いはしたくないから、イルカ先生がその気になってくれるまで待とうと思っていたのに。
「あなた、別の男に、あんな無防備に」
ぎゅう、と強く抱きしめられて、息が、胸が、詰まる。
「ごめんなさい」
この人が、俺に触れるだけで震える程に緊張するだなんて、こうして目の当たりにしても信じられないけれど。

好きだと言ってくれるけれど、キスもそれ以上もしようとしないカカシさんに、俺みたいなむさ苦しい男に欲情する訳ないだろうと諦めていた、そう本音を言ったら、きっと余計に拗ねさせるから。
「好きです」
ただそれだけを美しい耳に囁くと、オレの方が好きなんですよ、とカカシさんは小さく口を尖らせた。






ゆっち様 ありがとうございました!

2010.09.20

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