カカシにくっついてないとダメな病気(笑)にかかったイルカ




「面倒臭い事になってしまってごめんなさい」
悲壮な顔でそんな可愛い事を言うものだから、
「何言ってんの」
オレは笑って、患者やら見舞い客でごったがえす病院のロビーで、そのままキスしてしまったのだ。


普通、というのがよく分からないオレだけれど、恋人としてのイルカ先生が大変つれない男だと言うオレの意見は、世間一般としても正しいと思う。
人前では二人の関係を匂わせるような素振りは一切見せないし、二人っきりの時だって、眉間に皺寄せて仕事したり、掃除機や洗濯籠を抱えて家事にかまけて、基本オレは放りっぱなし。
セックスだって、気持ちいい事好きな癖に、自分からは絶対言い出さなくて、オレの誘いも仕方ありませんねみたいな顔するんだから、イルカ先生を好きで好きで堪らないオレとしては、切ないし歯痒いじゃないの。
だから、そんなつれない恋人が、オレにくっついてなきゃ頭の中が痒くて堪らなくなる病気になっちゃっただなんて、面倒どころか最高なの。


「カカシさん」
微妙に不機嫌な声で、イルカ先生がオレを呼んだ。
「何ですか?」
オレは、寝転がって読んでいた愛読書から顔を上げた。
ちゃぶ台の向こうで、赤ペンを持ったイルカ先生がオレを見つめてくる。
「お願いします」
「何をですか?」
苛、と言う字が、イルカ先生の眉間に乗った。
「触らせて下さい」
オレは、にっこりと笑った。
「どうぞ、好きなだけ」
起き上がり、二人の間にあったちゃぶ台を押しのけた。
両腕を広げると、膝立ちで近寄ってきたイルカ先生は、 「意地が悪いです」
小さく口を尖らせる。
「なーにが」
「前は鬱陶しい位、あなたからくっついてきたのに」
「鬱陶しいって思ったんだ。
酷い」
気拙げに目を伏せるから、オレは笑ってその手を取って引き寄せた。
「意地悪じゃありませんよ。
おねだりしてくれるのが嬉しいだけ。
オレはあなたに、四六時中くっついていたいもの」
「……っとに」
小さく呟いて、イルカ先生は、オレの胸に顔を埋めた。その薄赤く染まった耳に、そっと囁きかける。
「病気だから、仕方ないんですよ」
「……仕方ない、ですか」
「そう。
イルカ先生は、オレと一緒にいなきゃ駄目なの。これはもう、どうしようもないの」
全部分かっている。
オレと付き合う事で、イルカ先生は色々と嫌な目に遭っている。そして悔しい事に、イルカ先生自身もそれを仕方無しと甘んじている節がある。
里の為に、いつかはオレと別れなければならないと思っている。
だから敢えてつれなくして、オレが愛想を尽かすのを密かに待っている。
馬鹿だね。そんなの、こうしてオレの腕の中で目を閉じる表情を見たら、全部強がりだって分かる。
オレの事好きで好きで堪らないから、そんな切なそうな苦しそうな、幸せそうな顔をしているんでしょう? だから。
「余計な心配しないで、オレを好きでいて」
きつく抱きしめれば、同じ力の腕が、背中に回る。


心だけじゃなく体まで、オレから離れられなくなってくれて、ありがとう。





ReI様 ありがとうございました!

2010.06.07

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