10年も20年も

 

 

 

例えば中年太りなんかして、みっともない腹になったり。

バーコード禿げになったり。脂ぎった顔になったり。

そういう風になってくれたら、もう少し早く踏ん切れたのかもしれないとも思う。

まぁ、それも結局言い訳だけど。

俺の背が伸びて、見上げていたその顔を、少し見下ろすようになって。

子供の頃とは違う感情を持て余すようになって、気付いた。

イルカ先生が、カカシ先生に見せる顔。

俺を含めた他の人に対する時とは少し、そしてはっきりと違う。

激しいような穏やかなような。

情熱を秘めた顔。

 

 

 

イルカ先生は、前よりずっと細くなった。そう言うと、

「お前がでかくなっただけだ」

俺を見下ろすとは生意気な、と笑った。

今だったら、多分俺の方が力が強い。

無理矢理抱きしめて、全部奪うこともできるはず。

何度そう思った事だろう。

そうできなかったのはなぜだろう。

・・・やっぱり、俺がカカシ先生ことも、イルカ先生とは別の意味で大好きだからかな。

「準備できたか」

ノックと共に声がかかった。

「どうぞ」

ドアを開けたイルカ先生は、俺を見てにこりと笑った。

「馬子にも衣装とはこのことだな」

「ひでぇな、イルカ先生」

「ね、カカシさん?」

イルカ先生が振り返って言うと、カカシ先生がその後ろからひょこりと顔を出した。

「男前上がったねぇ、ナルト」

「カカシ先生まで、なんだよ」

俺が口を尖らせると、二人して顔を見合わせて笑った。

・・・何度、こういう風景を見ただろう。

二人の間に流れる空気に、焦がれただろう。

俺を見て、イルカ先生。

その顔を俺に向けて。俺のものになって。

俺はため息をついた。やっぱり、まだ、吹っ切れてないのかな。

イルカ先生、と向こうで呼ぶ声に答えて、イルカ先生は、早くしろよ、とドアの影に消えた。

「さすがのお前でも緊張してるのか?」

からかう様に言う写輪眼のカカシは、俺が子供の頃から伝説だったけど。今では木の葉はおろか周辺各国で、半ば神格化されている。

本気でやりあって、勝てる相手かどうか。

「ねぇカカシ先生」

「何?」

口に出すことで、決意を心に刻んだ。

「この俺が譲ってやるんだからな。泣かしたら承知しないからな」

カカシ先生は、驚いたように目を見開き、それからゆっくりと微笑んだ。

「言われるまでもないよ」

余裕の笑顔。本当に癪だけど。

「ナルト」

カカシ先生は、真っ直ぐ俺を見た。

「オレはお前が怖かったよ」

意味が分からず首を傾げた俺に、カカシ先生は言った。

「お前に本気でこられたら、あの人をつなぎ止めておける自信はなかった」

俺は呆然とした。今更、何を言う。

「オレが想ってるのの半分も、イルカ先生はオレのこと想ってくれてないからね」

「・・・弱気な事言ってると、今からでも奪っちまうぞ」

「それは困る」

晴れやかに、しかし容赦の無い眼でカカシ先生は言った。

「里長に盗られちゃったら、あの人攫って、二人して抜け忍になるしかないね」

・・・あぁ、やっぱりかなわない。

この覚悟。イルカ先生だけでいい、という潔さ。

「・・・カカシ先生は、馬鹿だ」

「は?」

「イルカ先生にあんな顔させられるのは、カカシ先生だけなんだから、もっと自信持てよ」

カカシ先生は、まじまじと俺を見て、そして小さく笑った。

俺も笑った。

踏ん切りがついた。もう、ここで、終わり。

ありがとう。そして、ごめんね、先生。

こら、とイルカ先生がドアから顔を出した。

「どこの世界に、新婦を待たせる新郎がいる!」

「分かってるってばよ」

つい昔の口癖が出てしまって、また、二人に笑われた。

結婚式と襲名披露を同時にするなんて、派手でいいだろ?

 

 

 

守る。

カカシ先生の隣で笑うイルカ先生も。

なかなか吹っ切れない優柔不断な俺を、本当に気長に待ってくれて、今日から奥さんになってくれる彼女も。

木の葉の里に生まれ、育まれるすべてのもの。人も想いも、何もかも全部、この手で守る。

その為に生きてゆく。

イルカ先生が、俺を見て微笑んだ。

「では、参りましょう。六代目」

俺は小さく頷いて、開け放した扉を出た。

 

 

 

そして今日。俺は火影になる。

 

 

 

050706

 

 

 

「10年も20年も」は、しどろさまのサイトで開催されていた

NARUTO10年後祭」のイラストを拝見して、あまりの素敵さに触発されて書いたものです。

もう、皆格好良いですもん!フリーイラストの、カカシさんの左手にどっきんですv

 

しどろさまに、拙文を無理矢理押し付けましたら(!)

こんな素敵なナルトを描いて下さりました!イラストはこちらv

オキアミで鯨を釣った気分ですv何て凛々しいの六代目v

しどろさま、ありがとうございますvもったいないです!

しどろさまの秀麗サイトはこちら

 

 

 

戻る

 

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送