My Home My Hand

 

 

 

 恐ろしい事に変わりない。

 心変わりされていても、されていなくても。

 

 

 

「うみの、査問会に出てもらうよ」

執務室に入るなり、綱手様は言った。

「時間は明日の10時から。おそらく夕方までかかるね。様式弐十壱の報告書、今からまとめられるかい?」

「はい」

俺は頷いた。査問会。任務中の規律違反、命令違反、情報漏洩を審問する。その報告書となると、今晩は徹夜を覚悟しなくてはならないか。

すまん、と綱手様は言った。

「本当はゆっくり休ませてやりたいんだけど、ちょっとてこずる事案があってね。査問委員全体がぴりぴりしてる」

「俺は大丈夫です。必要な事だと理解していますし」

「よし。報告書は、先に査問委員長に目を通してもらおう。9時にここへ持って来い」

「はい」

「本当は、査問委員会なんかより先に行ってもらいたい所があるんだけどねぇ・・・」

「はい?」

いや、と綱手様は続けた。

「後は、今晩の寝床だ。お前の部屋はもう既に引き払っている。荷物は保管庫にあるからいいとして、どうする?どこか宿をとるかい?」

いいえ、と俺は頭を振った。

「お構いなければ、アカデミーの宿直室を使わせてもらいたいのですが。報告書を書くにも、あそこが便利です」

「分かった。校長には話をしておく。他にも手続きが色々とあるが、とりあえず査問会が終わってからだ」

「はい。では、早速取りかかります」

俺は頭を下げて、執務室を出ようとした。

「うみの」

呼び止められて振り返った。

「・・・よく、生きて帰ってきてくれたね」

おかえり。綱手様はそう言って笑った。

 

 

 

昨日。6ヶ月ぶりに、俺は木の葉の里に帰ってきた。

時刻は夜中。里の大門は一般人の出入りを禁じている時間帯だった。警備していた若い中忍は、私服で額宛も認証プレートもないのに中に入らせろという俺に、警戒心を露わにした。

「うみのイルカといいます」

中忍の隠れた右手にクナイの存在を感じながら、俺は言った。

「綱手様に、五代目に伝えてください。うみのが戻りましたと」

10分程して、綱手様が警備室に現れた。

「・・・本当に、うみのかい?」

射るような目と、疑いを隠さない声に、俺は答えた。

「登録番号011450、うみのイルカです。受付所と、アカデミー教師を兼任していました」

「・・・・・・」

「・・・綱手様には、毎週火曜と金曜に、当たると評判の西の販売所に、木の葉くじをばらで買いに行かされました」

綱手様は、一瞬虚をつかれたような顔をした。

「・・・どうやら、本物の、ようだねぇ」

柔らかくくずれた表情と、よかった、の言葉が、俺の身に沁みた。

そしてその場で、俺は死んだことになっている、と聞かされた。

6ヶ月前。俺は任務遂行中、敵の自爆に巻き込まれた。味方の部隊が駆けつけたときには、俺の額宛と認証プレートが、血と、人の形も判断できない肉片の中に、埋もれていたという。

死んだと判断されてもおかしくない。むしろ、そう判断するのが妥当だ。

俺は殉職者リストに載り、葬儀があげられた。俺に関する書類は、専用の書架に片付けられ、私物は1年の期限付きで保管庫に入れられた。慰霊碑に名前も刻まれたという。

「全部取り消さなきゃならないね」

でも、と綱手様は豪快に笑った。こんな苦労なら、買ってでもしたいものさ。

俺はそのまま、綱手様に木の葉医院に連れて行かれ、精密検査を受けさせられた。体の隅々にまで及んだ検査は今日の昼過ぎまでかかった。

そして、異常なしとの医師の診断書を手に火影執務室に向かった俺に、査問会の通達が下ったのだった。

 

 

 

・・・来てしまった。

俺は、夕日に照らされるその家を、じっと見つめた。

上忍の自宅にしてはこじんまりとした、古い木造の住宅。家の中に人の気配はない。

いや、感じられないだけかもしれない。俺は苦笑した。あの人に、カカシさんに気配を消されて、それを感じ取れたことなど一度もなかった。

本当は、こんな事をしている時間はなかった。アカデミーの校長先生の自宅に伺って、ご挨拶も兼ねて鍵を借りなくてはならないし、何より明日提出の報告書が手強い。

俺は頭を振った。違う。ここへ来たくなかっただけだ。決定的な何かを見たり聞いたりしたくなくて、来たくないと思っていたのに。

なのに俺の足は、自然にここに向いていた。本当は、里に戻って、何を措いても一番に来たかった所。カカシさんの家。通い慣れた、愛する男の家。

会いたい。ずきずきと痛む胸を押さえ、俺はカカシさんの家を見つめ続けた。

カカシさんと付き合い始めたのは去年の10月。きっかけはあの人の一言だった。

「もう、しばらく上忍師は勘弁ですねぇ」

二人で酒を飲んでいて、何かの話題で小さく呟かれた。

生まれて初めて受け持った下忍。二人は素晴らしい師に恵まれた。ただ、あの人が己の技を教えたあの子だけが、闇の中へと姿を消した。

慰めなんておこがましい。同情などもってのほか。かける言葉が見つからなかった。その沈黙を察知して、つまんないこと言いました、とカカシさんは笑った。

その笑顔が、俺の心に波紋を起こした。この人は、ずっと一人で抱え込んでいくつもりなんだろう。それは、強いけれど、寂しいことだ。

「俺でも・・・」

小さく言った俺に、カカシさんは、何?と首を傾げた。

「俺でも、話を聞くぐらいはできますから。言ってください。俺にできることなら、何でも」

カカシさんは、じっと俺の顔を見つめた。そして、小さく息をついて言った。

「・・・じゃあ、イルカ先生。オレのこと好きになってよ」

額宛と口布で、表情は見えなかった。だから、冗談だと思った。そう言うと、カカシさんは悲しげに笑った。

「だったら、ずっと好きだったなんて言ったら、ひかれちゃうね」

「・・・・・・」

「ごめんなさい。初めて会った時から、好きです」

だから、オレの事好きになって。

その時の俺には、彼に対する恋愛感情はなかった。それでもいいとカカシさんは言った。

「オレの事、絶対好きにさせてみせますから」

そして、カカシさんはその宣言を見事なまでに実行した。

見つめる景色は、次第に暮色を増してゆく。それでも、カカシさんの家に、明かりが灯る様子は無い。

いないかもしれない。そう思った瞬間、俺は、カカシさんの家の前に続く道に足を踏み出した。止めたほうがいいと理性が囁いたが、もう止まらなかった。

カカシさん。あなたはそこにいますか。ゆっくりと、僅かな気配でも感じ取れるように歩を進めた。

この手の中にある合鍵で、その玄関のドアを開けたい。帰ってきましたと、伝えたい。

でも。恐怖が、胃の腑をぎりぎりと締め上げた。もしかしたら、カカシさんは、俺を忘れて新しい人を見つけているかもしれない。6ヶ月という時間は、心変わりを責めるには、決して短いとはいえない。しかも俺は死んだ事になっている。彼に別の恋人ができていても、文句を言える筋合いではない。

カカシさんが、俺を見るのと同じ目で、俺以外の人を見つめる。俺を求めるあの激しさで、他の誰かを抱く。そんなのは嫌だ。絶対に嫌だ。

カカシさん。今、誰かと一緒にいますか?

今の俺には、その問いの答えが、何よりも恐ろしかった。

 

 

 

この6ヶ月間、どこで何をしていたのか。故意にしろ不注意にしろ不可抗力にしろ、木の葉の情報を他に漏らすような行動をとっていなかったか。翌日の査問会では、その事を重点的に確認された。情報漏洩は、造反、里抜けに次ぐ重大犯罪だった。

俺は、怪我で意識不明の状態だったこと、目覚めた後も暫くは記憶を失っていた事を説明した。その時世話になった医師とその娘の名前と住所も、報告書に載せた。あの親切な人達を守る為には、隠さない事が一番だった。

10人の査問委員達は、俺の正面に半円状に並んで座っていた。綱手様が、部屋の奥で腕を組んでいた。

委員席の真ん中の男が、言った。

「忍服は持ち帰ったようだが、行方不明当時、荷物、薬や巻物は所持していなかったのか?」

「付近の偵察でしたので、応急の医療セットと兵糧丸のみ携帯していました」

「記憶を無くしていたというが、目覚めてから、記憶を完全に取り戻すまでの間、断片的とはいえ、その内容を他人に話していないか?」

「話していません。思い出した記憶が、個人的な事でしたので」

「個人的とは?具体的に言うと?」

俺は詰まった。

「・・・その、恋人の事です」

男は表情も変えなかった。

「恋人とは、木の葉の忍か?」

「・・・はい」

これ以上突っ込まれたらどうしよう。査問会が始まって初めて、俺は質問の答えを用意できなかった。

カカシさんの事、ずっと隠したがったのは俺の方だった。男同士だと気後れしていた。でも、今では、恋人だと思っているのは、俺だけかもしれない。

「もう、いいだろう」

部屋の奥に座っていた綱手様が、そう言って立ち上がった。

「同じようなことを何度も聞いて、矛盾点を突こうとしてるのだろうが、どうも時間の無駄のようだね。お前達が確認したいことは、すべてこの報告書に書いてある。知りたい事があったら、後で呼べばいい」

委員席の男は何か言いかけたが、結局口をつぐんだ。

「行こう」

綱手様に促され、俺は会議室を後にした。

「寝てないね」

執務室に戻り、綱手様は、俺の目を見て言った。

「まぁ、さすがのお前でも、あの内容の報告書をこの短時間で仕上げるのは至難だったろう。今日は、もうゆっくり休め。挨拶廻りも明日でいい」

「はい。あの、先程は、ありがとうございました」

なあに、と綱手様は肩をすくめた。

「査問委員のやり口は分かってる。自分たちはしっかり仕事をしていますとアピールしたいのさ。時間をかければいい、というものではないだろうに」

俺はもう一度、頭を下げた。くらり、と眩暈がした。

よく考えれば、普通7日間の距離を4日間につめて、木の葉に帰ってきた。精密検査の時に眠ったと言えば眠ったが、それで疲れがとれるはずもない。

「菖蒲荘の主が、部屋を取ってくれたそうだぞ。新しい部屋が見つかるまで、使ってよいそうだ。主の娘が、アカデミーでお前の受け持ちだそうだな」

「そうですか。ありがたいです。助かりました」

息をついた俺に、

「明日から、またこき使うよ」。

覚悟しとくんだね、と綱手様は笑った。

 

 

 

後悔している。

あの任務に出る前、俺はカカシさんと喧嘩をした。

1ヶ月程かかる任務。仕事だから仕方ない、と言う俺に、カカシさんは珍しくごねた。

「あなたは受付とアカデミーの仕事だけしてたらいいんですよ」

かちんときた。

上忍のカカシさん。中忍の俺。心のどこかにずっとあったコンプレックスが、噴出した。

「どうせ俺は中忍で、事務方です。あなたのような力も技術もありません。でも、俺には俺なりに里のためにできることがある。今回の任務がそうです。それをあなたに、上忍のあなたに、とやかく言ってもらいたくありません」

ごめんなさい、とカカシさんは言った。傷つけるつもりはなかったんです。ただ、心配で。

でも、俺は聞かなかった。俺より傷ついた顔のカカシさんを残して、そのまま任務に出た。

・・・ばちがあたった。

カカシさんの気持ちを無視したから。何より失いたくない人なのに。

俺が死んだと聞いて、あの人は悲しんでくれただろうか。

それとも、あんな分からず屋せいせいしたと、笑っただろうか。

 

 

 

査問会の翌日、俺は朝から書類の山に埋もれた。仕事をしていれば、嫌な事を忘れられる。厄介な癖がつきそうだった。

「カカシの様子は、どうだい?」

「はい?」

綱手様の声が聞き取りにくくて、俺は書類の山をよけて、綱手様を見た。

「カカシは、もう大丈夫かい?」

考えていたことを読まれた気がして、俺は思わず書類の束を床に落としてしまった。

「・・・どうして、俺が」

帰ってきてから、二日。暇があればカカシさんの家の前をうろついているなんて、言える訳がない。

カカシさんの家は、相変わらず人の気配がなかった。任務に出ているのだろうか。

「会ってないのか?」

なぜか、綱手様は慌てたように言った。

「それは、駄目だ。さっさとカカシの所に行ってくれ。すまん。もう会ってるだろうと勝手に思い込んでいた」

「・・・・・・」

「恋人同士なんだろう?」

綱手様は微笑んだ。

「お前の額宛と認証プレートは、あいつが持ってるよ」

色々な感情が湧き上がり、俺は唇を噛んだ。

「・・・行けません」

「どうして?」

「俺は、もう、6ヶ月前に死んだ事になってます。だから、ひょっとしたら、もう、別の人と・・・」

「カカシも、6ヶ月前に死んだよ」

俺は驚いて綱手様を見た。綱手様は、穏やかな顔で俺を見返した。

「肉体は生きている。だが、心が死んでしまった。お前と一緒にね。最初の1ヶ月は特に酷かったな。飯を喰わないもんだから、点滴で命を繋いでいたんだが、それさえ全部涙で流れていくようだった。で、隙さえあれば、お前の後を追おうとする。片時も目が離せなかったよ」

思いもよらない話に、俺は呆然となった。

「まぁ、3ヶ月位してようやく落ち着いて、任務に出られるようになったと思ったら、今度は自分一人、命を捨てるような方法で、任務を遂行するようになった。まるで殺してくれと言わんばかりにな。それで、今も謹慎中だ」

何て事を、カカシさん。俺は涙が溢れてくるのを止められなかった。

馬鹿だ。俺は本当に馬鹿だ。そんな思いをさせていたのなら、心変わりしていてくれたほうが、よほどよかった。

だから、うみの。歯を食いしばる俺に、綱手様は言った。

「お前が生きて帰ってきてくれた事は、お前とカカシ、二人の忍が、木の葉に帰ってきてくれた事になるんだよ」

会いに行ってやってくれ。綱手様は、笑って俺の背中を押した。

あいつを、はたけカカシを木の葉の里に、戻してくれ。

 

 

 

逸る気持ちを抑えながら、ドアを叩いた。

そのドアが開くまでの5秒間が、永遠に続くような気がした。

そして。ゆっくりとドアが開き、そこに立つ愛しい男の姿が目に入った途端、綱手様の言っていた事が真実だと思い知った。

「迎えに来てくれたの?」

カカシさんの声は頼りなげだった。

「イルカ先生がいるところに、オレも連れて行ってくれるの?」

ごめんなさい。

遅くなって、本当に、ごめんなさい。そう言って、俺はカカシさんを首に腕を回し、抱きしめた。

覚えている。カカシさんの体。筋肉の強さ。低く通る声。乾いた匂い。頬に当たる銀色の髪の感触まで、堪らなく愛おしかった。俺が腕に力を込めると、

「帰ってきてくれた・・・」

カカシさんは、小さく、安心したように呟いた。おずおずと俺の背中に回した手が、強く、俺を抱き返した。

「・・・ね、本当に?」

俺の髪に顔を埋め、カカシさんは言った。本当に、イルカ先生?

頷くと、だったら確かめさせて、と抱き上げられた。

「カ、カカシさんっ」

寝室に運ばれ、ベッドに倒された。そのまま抱き込むように押さえつけられ、口付けられた。熱い舌に奥までまさぐられる感覚に、頭の芯がじんじんと痺れた。

「・・・っ、ふ・・・」

いつの間にか露わにされた肌の上を、カカシさんの唇と手が、執拗に這っていった。確実に俺の快感を掬いとるその動きに、俺は早くも理性を飛ばしかけた。

「・・・カカシ、さん」

「イルカ先生を感じさせて」

耳元に、声が響いた。

「ここに、確かにいるって、オレに実感させて」

服を剥ぎ取られ、腰を押さえるように跨られた。体中で疼く熱にぼんやりとする目で、俺は上着を脱ぐカカシさんを見上げた。見下ろす瞳に深い情欲の色を見て、思わず息をのんだ。

・・・こんな男は知らない。肌を合わせて再び施される愛撫に、俺は追い詰められ、耐え切れずに声を上げた。

知らない。こんな風に俺を翻弄する男は知らない。俺の記憶の中のカカシさんは、もっと穏やかだった。無体をしなかったとは言わないが、力に任せて押さえつけられ、見境なく貪りつかれるのは、初めてだった。

恐い。・・・でも。

下腹で立ち上がる熱をきつく握りこまれて、俺は喉で仰け反った。激しく擦り上げられ、内腿がつっぱり、声が溢れた。

「あっ・・・・っ」

久しぶりの刺激、という以上の熱が、俺の中で渦巻いた。触れられて、圧倒されて、恐ろしささえ感じながらも、それに溺れていく自分。すべてが甘く激しく溶けていく。

あっけなく限界に近づく俺を握りこんだまま、カカシさんは俺の腰を抱えた。後ろをまさぐる指に思わず身が竦んだが、カカシさんは容赦なかった。

無理に拡げられる痛みに涙が零れた。

それでも、体は、あの快楽を覚えていた。カカシさんに教えられた、自分ではどうすることもできない、あの疼き。

そして。ごめん、と耳元で低く囁いて、カカシさんはその熱い塊を俺に沈めた。

 

 

 

「イールカせんせぇ。さよーならぁ」

鞄を抱えた子供たちが、夕焼けの中、校門に向かって走っていく。

「おう、また明日な。気をつけて帰れよ」

その小さな背中達に声をかけて、俺は受付所へと歩き出した。今日は5時から11時まで、受付の仕事が入っている。

日常が少しずつ、戻ってきた。

査問会も無事にクリアし、受付とアカデミーの業務に再び就いた。あちこちでおかえりの言葉をかけられ、同僚達に生還祝いだと3日連続で飲みに連れて行かれ、アスマさん達から、霞み蔵なる有名な酒を贈られ。

この温かい里に生まれ育ったことを、心から感謝した。

「イルカ先生」

受付所の入り口で、後ろから声をかけられた。振り返ると、夕映えに銀色の髪を輝かせた男が立っていた。

「カカシさん。今日はもう終わりですか」

頷いたカカシさんは、

「明日から、1週間任務で里を出る事になりました」

「・・・そうですか」

仕方の無い事とはいえ、やはり心がひきつった。見上げると、気遣わしげな表情のカカシさんと目が合った。

忍のくせに、二人とも情けない。なぜだが可笑しくなって、つい噴出してしまった。カカシさんも、何が可笑しいんですか、と言いながら、つられて微笑んだ。

本当に、こればっかりは仕方が無い。

「今日、イルカ先生11時までですよね」

「そうです。明日早いんでしょう。先に寝ててください」

「駄目です」

カカシさんはきっぱりと言った。

「外に任務に出る時は、手を繋いで一緒に寝るって、決めてるんですから」

・・・新手のまじないだろうか。それでなくても、戻ってきてからのカカシさんは、甘えたに拍車がかかっている。

「待ってますから。早く帰ってきて下さいね、イルカ先生」

結局俺はあのまま、カカシさんの家に居着いている。次の部屋が見つかるまで、とは思ったが、保管庫にあった俺の荷物を、いそいそと空いた部屋に片付けるカカシさんを見ていたら、躍起になってこだわる事もないと思えてきた。

ただ、生活費だけは、何と言われようと半分出させてもらおう。

一瞬だけ指を触れあわせ、早く帰ってね、と念を押して、カカシさんは帰っていった。

受付所に入ると、綱手様が頬杖をついて俺を見た。

「お疲れ様です、五代目」

頭を下げながら椅子に座った俺に、

「火影公認の仲とは言え、公共の場所でイチャイチャするのは、どうかと思うよ」

イ、イチャイチャ?!俺は仰天した。そんな風に見えてるのか。それに、

「火影公認って、な、何言ってるんですか!」

「冗談だよ。面倒かけたんだ、からかわせてくれたってばちは当らないだろ」

「・・・・・・」

「あ〜あ、あたしもいい人見つけようかね」

爆弾発言に、ぎょっとする。

「こっちも歳だし、我が儘は言わないよ。そうだねぇ、譲れない条件はたった一つ」

あたしに腕相撲で勝てる男。

この世で一番難しい条件を言い放ち、綱手様は笑った。

 

 

 

完(05.07.12)

 

 

 

小話「情熱5」イルカSide.

こちらの作品は、お持ち帰り自由でございます。

煮ても焼いても、ぶつ切りにしても、味付けを変えても、何でもOK。

ご自由にどうぞvv

 

 

 

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