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我ながら、まどろこしい恋だと思う。 夕方。急に降り出した雨。 受付の出口で、空を見上げる猫背の背中を見つけた。 隣に立って、傘を広げる。それから、少し、勇気を出す。 「よかったら、どうぞ」 軽く聞こえるように。声が震えないように。ちょっと笑ってみせたりする。 カカシさんは、心底吃驚したように、目をぱちぱちさせながら俺を見た。 「え?何で?イルカ先生の家って、オレんちとは逆方向でしょ?」 「・・・丁度、西の方に行く用事があるんです」 咄嗟に用意した嘘が、不審に聞こえないよう祈る。 どくどくと脈打つ自分の心臓の音を聞きながら、たっぷり10秒は見つめられた。平静を装った顔に、流石に血が集まりかける。 失敗したかと思い始めた時、 「・・・ふーん。それはどうも」 どこかつまらなそうな口調で、カカシさんは呟くように言った。そして、ひょいと頭を下げて、俺が差す傘の下へ入ってきた。 雨。 濡れる足元。跳ねる水。 右側にある、初めての近さ。触れる肩。すぐ隣の顔。 俺の左肩が濡れぬよう、黙って傘の骨の先を押すあなたのそれが。 俺と同じ気持ちならどれほど嬉しいだろうと願う帰り道。 060507 ブラウザを閉じてお戻りください |
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