指が、喉に絡みつく。

例えようもなく優しい仕草で、労わるように、慈しむように、オレの喉に絡みつく。

オレを見つめる眼差しに意志の力強さは無く、怒涛のようにあなたを翻弄した感覚の余韻が、涙の膜となってその黒い宝石のような瞳を覆って揺らめいている。

「ひどい」

掠れた声が、囁く。

「あなたは、ひどい」

これ以上、俺を、くるわせたいんですか?

戦慄くように言葉を紡ぐその唇に、唇を重ねて想いを吹き込む。

オレはもっと、あなたにくるっている。

 

オレを好きだと言ってくれる心を信じている。誰よりも何よりも大切に想ってくれていると分かっている。

けれど。

獣のように我を忘れて求め合おうと、どれ程深く繋がろうと、二人が別々の人間である以上、皮膚二枚の隔たりは、絶対に無くなる事は無い。

言葉は発した途端に宙に消え、肌につけた痕はいずれ癒え、身体の奥に放った精は、あなたの何とも交わる事無く吐き出される。

この絶対の隔絶が、悲しい程確かにオレに知らしめる。

恋というには余りに気違いじみたあなたへの感情を、本当の意味であなたに伝える事はできないと、焦がれる想いと同じ重さで絶望する。

だから。

あなたにこの想いを伝える最後の手段は、あなたに殺される事だと、ひっそりと願う。

オレの鼓動も、呼吸も、体温も記憶も感情も何もかも、全てがあなたの手の中で終われたら、きっとオレは永遠に、あなたの中に残る。

あなたの手がオレを奪う瞬間の、あなたの葛藤が苦悩が懊悩が衝動が、すべての情動があなたにオレを刻み込む。

それが叶うなら。

あなたの心の最も深く激しい場所で、オレはあなたを求め続ける。あなたは、オレの想いを自分の心の中に感じ取り、オレの恋を本当の意味で知る。

永遠に、あなたは、オレだけのものになる。

 

しかし。

「好きです、カカシさん」

オレがどれ程渇望しようと、喉に絡むこの優しい指に、力が込められる事は絶対に無い。

「俺は、誰よりもあなたを」

「分かっています」

分かっている。この上なく幸せに分かっている。

だからオレは、あなたへの片恋に、永遠に苦しむ。

 

 

 

091105

 

 

 

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