※注※ カカイル緊縛まつり2005(050630〜0731) 参加作品リメイク |
「長期任務が入りました」 二人で囲む、いつもの夕食。ぽつりと、カカシさんが言った。 「期間は半年かもしれませんし、1年かも、10年かもしれません・・・もう、二度とこの里に戻れないかもしれません」 俺は、食べかけていた沢庵を、ぽろりと落としてしまった。 「・・・これじゃあ、さすがに、待ってて下さいなんて言えないですよ」 そう呟くカカシさんの顔は、今まで見たこと無いくらい男前だった。 そして。 唯一揃いの、細い銀の指輪を俺の薬指から取り上げて、カカシさんは任務に旅立った。 結婚できるわけじゃない。 永遠を誓ったわけでもない。 ただ、今、相手が好きだという気持ちだけで続いていた関係。 そのあまりの儚さに、涙さえ出てこない。 指輪も無くした今、俺とカカシさんを縛るものは、何一つない。 あの人を、俺に縛り付けておけるものは、この世に何一つない。 オレの事は忘れて、幸せになって下さいというのが、あの人の別れの言葉。 あなたは、指輪を持っていくことで、俺との鎖を切ったつもりなんでしょうが。 俺の心は、もう既に、あなたへの想いでがんじがらめになっています。 忘れるとか、忘れられないとか、そういう事ではなく。 あなたを知ってしまった今では、もう誰も、あなたの代わりにはならないということなのです。 例えあなたの心が他の誰かに囚われたとしても。 あなたと繋がっていたはずの、鎖の端を握り締めて、ただ絶望を思うだけ。 毎夜のように与えられていた熱い感触が、肌の上から消えて。 すっかり馴染んでいたカカシさんの気配が、俺の部屋から消えて。 これから死ぬまで一人って、俺ってかなり可哀想な男だな。 そう他人事のように思いながら、季節を越えた。 そして。 「あなたは、馬鹿です」 一年ぶりに会った恋人に、それが最初に言う台詞か? 「大馬鹿です。どうして、一人でいるんですか」 そう言って、カカシさんは俺を抱きしめた。 「だって」 俺は笑って、カカシさんの背中に腕を回した。 「あなた以外に、誰がいるっていうんです?」 約束もない。誓いもない。 あるのはただ、互いを想う気持ちだけ。 この左手を守るのは、あなたと揃いの薬指の指輪。 この心を縛るのは、目には見えないけれど、何よりも確かな、あなたへの想い。 → カカシSide 050821 |
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