2.

 夕暮れ間近のアカデミーに、すでに子供達の姿は無かった。

 職員室に、明かりが灯っている。カカシは真っ直ぐ、その部屋に向かった。

 イルカは一人、机に向かって書き物をしていた。その真剣な表情に、入り口で声をかけるのを躊躇っていると、気配を感じたのか、イルカが頭を上げた。あ、という表情の後、ぎこちなく目を逸らされた。

 カカシはイルカの前に立った。イルカはペンを置いた。

「あんた、本当に先生だったんだ」

 イルカは寂しそうに微笑んだ。

「疑ってたんですか?」

「だって、あんた嘘つきだもん。嘘つきが先生やってちゃ駄目でしょう」

イルカは、心外だ、という風に眉をひそめた。

「俺は嘘なんかつきませんよ」

「ついたでしょ、昨日の夜、オレに」

 昨日の夜、という言葉に、イルカはびくりと肩を震わせた。カカシは構わず続けた。

「任務だったら、耐えられるなんて、嘘だよね」

「・・・嘘じゃないです」

「嘘だって言って。そうじゃなきゃ、オレが耐えられない」

イルカは、カカシを見た。

「他の男に抱かれて平気だなんて、嘘でも絶対言わないで」

イルカの瞳が揺らめいた。

「オレのこと好きなんでしょう?」

ぐっ、とイルカは唇をかみ締めた。

「・・・言うべきじゃなかった、と思ってます」

「どうして?」

「嫌われたく、なかったから」

嫌ったりしません、とカカシは手を伸ばした。頬にふれるとイルカは体を強張らせた。

「どうして、オレを好いてくれるあんたを嫌いになりますか?」

「あなたは俺のこと何にも知らない」

俺は下劣な男です。イルカは自嘲した。

「男の相手は任務でしかしないことは本当です。好き好んで体を預けた事は一度もありません。でも俺は・・・誰かと体を重ねる時、貴方のことを思い浮かべていました。現実から逃げて、貴方に触れていると、思い込むようにしていました。そうじゃないと、駄目で、そうしたら、体が反応して」

イルカの目から、涙が一筋こぼれた。

「あなたの事が好きなのに、あなたを汚す自分が嫌でした」

ごめんなさい、とイルカは繰り返した。

想う相手に、どれほどの勇気がいる告白か。

「バカな人」

カカシはイルカを抱きしめた。涙はもうなかったが、その肩が震えているのがわかった。悲しげに許しを請う姿が、堪らなく愛おしかった。

「それは、オレ以外じゃ駄目ってことでしょ」

でも、とイルカはカカシの腕の中で頭を振った。心がどうであれ、その時俺は感じたんです。

 「ちょっと黙って」

カカシは腕に力を込めた。

「それ以上聞くと、やせ我慢できなくなる。あんたの相手したやつ全員、殺しに行きたくなっちゃうから」

 もういいよ、と囁くと、イルカは目を閉じ、震える瞼で、大きく息をついた。

「・・・ありがとうございます」

イルカは恥ずかしそうに苦笑した。涙なんか見せてみっともないです。

「オレだけだって、言って」

耳元で囁くと、イルカはカカシの眼を迷いなく見返した。

「・・・貴方だけです」

「ずっと、オレだけにして。オレもあんただけにするから」

イルカの顔がくしゃり、と歪んだ。

「・・・本当に?」

ここに、とカカシは自分の唇に、イルカの指を触れさせた。

「あんたに印をつけられたせいかな。ずっと、あんたの事が気になってしょうがない」

噛みつかれた相手を好きになるなんて、オレは変だね。そう言うと、イルカは顔を真っ赤に染めて、小さく、夢みたいだと呟いた。

視線が絡み、どちらともなく、唇を寄せ合った。最初は触れるだけだったものが、次第に激しさが増し、やがて呼吸まで吸い取らんばかりに、互いを貪りあった。

 ようやく唇を離し、深いため息をつくイルカの首筋に口をつけたカカシは、そのまま体重をかけて床に倒そうとした。

「・・・駄目です」

イルカは慌ててカカシの胸を押した。

「・・・嫌?」

「ここでは・・・勘弁してください」

目元を紅く染めて言うイルカに、カカシは沸きあがっていた欲望がうねりだすのを感じた。それを何とか押さえ込んで、

「じゃあ、オレの家、来る?」

 イルカが頷くのももどかしく、カカシはその手を引いた。

 

 

 

 シャワーを止める手が震えていた。

カカシは、自分が緊張していることに気づいた。

 童貞のガキじゃあるまいし。苦笑が漏れた。

 寝室に戻ると、先に風呂を使っていたイルカが、窓枠に腰掛けて、外を眺めていた。

 ほどいた髪が、月光を弾いて薄く光っている。着替え代わりに出した浴衣の、少し乱れた足元に眼が吸い寄せられた。

 「きれいな月ですね」

イルカが、外を見たまま言った。

「なんでかな、里で見る月はいつも白くて綺麗な気がします」

 近寄って頬に触れた。イルカは痛みに耐えるような顔をして、

「ごめんなさい・・・かなり、緊張してます」

「・・・それは、お互い様」

微笑んで口付けた。頬にも、閉じた眼にも、耳にも、髪にもキスの雨を降らせた。そして薄く上気した首筋にそっと唇を這わせた。

舌が肌を滑るたび、イルカの体が強張り、戸惑ったような手が、そっとカカシの頭を抱えた。

肩、鎖骨と、唇を下ろしながら、浴衣の襟元から、手を差し込んだ。しっとりとした肌をまさぐると、イルカが小さく息をついて身じろぎした。カカシに、体重を預けるようにもたれてくる。そこでカカシは気が付いた。

「がっついちゃった。体、しんどかったね。ごめんなさい」

イルカを窓枠から立たせて、ベッドに導いた。仰向けに倒れこませて、上からのしかかると、揺れる黒い瞳が見上げてきた。そこに確かに情欲の色を見て、カカシはのめり込んだ。

浴衣を剥ぎ取り、裸にした。羞恥に染まる体の隅々にまで手を伸ばし、頭の先からつま先まで口付けた。イルカの肌が上気するにつれ、唇でつけた赤い跡の色が濃くなった。

「は、はたけ上忍・・・俺が・・・」

あがる息で、イルカが囁いた。カカシの中心へ、奉仕の手と唇を伸ばそうとするのを捕らえ、深く口付けた。

「しなくていいから」

「でも・・・俺も、貴方を・・・気持ちよくしたい・・・」

カカシはくすり、と笑った。

「あんたのそういう顔見てるだけで、オレは物凄く気持ちいい」

それに、とカカシはイルカの耳を舐めあげた。

「これから先、いろいろとやらしい事をやってもらう予定だから、今日は大人しくしてなさい」

胸の突起をまさぐると、イルカの口から、耐え難い甘い声が漏れた。

「ここ、好き?」

問うと、眉を寄せながら微かに頷いた。唇と片方の手でそれを弄り、空いた手で脇腹や太ももを撫で上げると、イルカの呼吸がどんどん上がっていくのが判った。

「あ・・・あぁ・・・んっ・・・」

 突起に歯を立てると、びくり、とイルカの体が跳ねた。はずみで、イルカの中心がカカシの腕に当たった。直接触れてはいないのに、既に熱く充血している。薄く笑ったカカシはそれには敢えて触らず、胸を弄りながら、足の内側の付け根や、下生えの辺りに指を這わせた。そのいやらしい刺激に、イルカは容赦なく追い上げられていった。

 「っ・・・は、はたけ上忍っ・・・」

「何?」

「・・・か、勘弁・・・してく・・・ださい」

「何を?」

 顔を真っ赤にして、イルカは呻いた。カカシはその耳元に熱い息を吹き込んだ。

「これ?こうされるの嫌い?」

イルカの中心は、すでに腹につきそうなほど反り返って、先端から透明の雫を溢れさせていた。その付け根のぎりぎりを、カカシは指先でなぞっていった。焦れたようにイルカの腰が揺らめく。その艶かしい動きにカカシは我を忘れそうになった。

「あ・・・あっ・・・はたけ、上忍・・・」

口付けるように間近で、カカシは囁いた。

「カカシって、呼んで」

「ふ・・・っ・・・っあ」

「呼んでくれたら、して欲しいことしてあげる」

 切なさと快感の混じった声で、イルカは切れ切れにカカシの名を呼んだ。カカシは、イルカの肩を抱え込み、熱く猛ったイルカの性器を、きつく掴んだ。

 声にならない声をあげて、イルカがのけぞった。容赦なく擦りあげると、びくびくと体を強張らせ、カカシの手に押し付けるように、腰を上げてくる。寄せた眉と小刻みに震える瞼、唇から堪えられずに漏れる声が、眩暈がするほど官能的だった。

 乳首への刺激をあわせると、反応はますます激しくなった。カカシの手が、先端から漏れ出たもので濡れ、密やかな音をたてた。

「も、だめ・・・はな・・・して、くださ・・・」

「いいよ。出して」

「だ・・・め・・・あっ、あ・・・っ」

先端の窪みを親指で撫であげると、イルカは全身を張り詰め、小さく声を上げてカカシの手の中に放った。とろりと、イルカの汗ばんだ腹の上にも流れた。

「ご・・・ごめんなさい」

 荒い息を吐いていたイルカは、粗相に動揺しながら、カカシに謝った。カカシは、手に付いたイルカの精液を、イルカの眼を見ながら、見せつけるようにゆっくりと舐めた。イルカの顔が羞恥で燃え上がった。

 カカシは自分の我慢が限界に近くなっていることを自覚した。

 いい?、と目で問うと、イルカは小さく微笑んだ。

「・・・カカシさんも、気持ちよくなって」

 カカシはイルカの腰を抱え、足を開かせた。身をよじったイルカを、片足を大きく上げた姿勢で押さえつけ、イルカの精液と自分の指を舐めた滑りで、露わになったその最奥に触れた。イルカは、取らされた姿勢の猥褻さと、カカシの視線に晒されている部分と、そこで蠢く指の感触に堪らなくなって、腕で顔を隠した。

「いっ・・・あぁ」

入り口を刺激していた指を、イルカの呼吸に合わせるように、それでも容赦のない勢いで、侵入させた。引き攣れる痛みに、イルカの喉が反った。

「う・・・うぅ・・・あ・・・」

「まだ、きついね」

カカシは指を抜き、肛門に直接唇をつけた。行為に驚いて、汚いです、と逃れようとするイルカの腰を抱え、ゆっくりと唾液を含ませた。舌と唇の湿った音に、イルカの入り口がびくびくと収縮した。イルカの強張りが解け、吐息が漏れ始めるのを確認して、指を再び差し入れた。イルカの腰がその動きを追って、甘く蠢き始めた。

 「あ、あぁ・・・っ・・・い」

カカシの指がその一点を捕らえると、イルカの体がびくりと震え、声と共に性器がはっきりと立ち上がった。とぷり、と先走りが流れ出した。

「ここが、いいの?」

「あ・・・ぁん・・・んっ・・・」

「指増やしても、平気だね。もっと、ってオレに絡みついてくる」

「や・・・そんな・・・あっ・・・」

指の動きに合わせて、イルカは淫らに腰をうねらした。絶え間なくこぼれる嬌声と、ちろちろと蠢く舌が、カカシを誘惑した。溢れた唾液が、イルカの口元から流れた。

「このままでも、もう一回いけそうだね」

カカシは、充血したイルカ自身に触れた。

「でも、もうちょっと待って」

その根元をきつめに握ると、イルカの声が高くなった。

 指を引き抜き、代わりに、カカシは自分の高ぶりを押し付けた。イルカが小さく息を飲むのが判った。

 ・・・押し入ったイルカの中は、きつくて眼がくらみそうだった。

欲望のままに、カカシはイルカを突き上げた。イルカが快楽のままに上げる声や、我を忘れた艶めかしい表情、中の熱さとうねりを、もっとずっと味わっていたかった。

イルカの奥の奥まで貪りたくで、高ぶったイルカを散々焦らした。

泣きながらもうだめ、と訴えられて、遂に堪えられなくなった。

 

 

 

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